今回のテーマは、【建売住宅が世に出るまで】
私は開業前、サラリーマンとして不動産デベロッパー4社で、主に設計部門に所属しておりました。
その経験もふまえ、
- 建売業者について
- 建売住宅が世に出るまで
の2点を解説いたします。
建売業者について
建売業者の仕事は、簡単に説明すると【土地を買ってきて、加工して売る】ということです。
会社規模の比較でいうと、【財閥・複合系】と【突発系】に分けられるでしょうか。
どちらも私が勝手に定義づけているだけで世の中にはない言葉なのですが、
【財閥・複合系】
大企業・住宅産業といった感じ、テイストはハウスメーカー
【突発系】
工務店が出発地で着々と大きくなった感じ、テイストはパワービルダー
といった具合です。
具体的に企業名でいうと、
財閥・複合系は三井ホーム・住友林業・三菱地所ホーム・積水ハウス・パナホームなど。
突発系の有名どころでいえば、オープンハウス・タマホーム・飯田産業グループでしょう。
価格面で言うと、総じて【財閥・複合系】より【突発系】の方が販売価格は抑えめです。
企業知名度を生かし格や箔で販売するのが財閥・複合系の生命線なので、モデルハウスや広告宣伝費も経費が掛かり、販売価格にその分を乗せる必要があるからです。
突発系も大企業となればモデルハウスや広告宣伝費にお金をかけています。
しかし、両者を比較すると、平均年収や福利厚生・就業環境でも大きく差があるため(財閥・複合系は他業種にも引けを取らない一流企業の扱い)財閥・複合系と突発系では線引きができそうです。
これらの定義はあくまで私の経験による主観ではあるのですが、企業規模や成り立ちの面においては、一般的にもこのようなイメージで分類されているのはないでしょうか。
他の建売業者について
戸建住宅を提供している会社は建売業者だけではありません。
地域に根付いた
- 工務店
- 住宅デベロッパー
も建売住宅を供給している会社です。
これらは先述の建売業者に比べ、小規模で経営されています。
事業の発展にはマンパワーによる要素が必要です。
知名度や実績・供給量は大手と比較にはならないので、経営にスケールメリットの恩恵を受けることができず、建築コスト抑制や仕入案件情報の入手量などで、苦戦を強いられるケースが散見します。
また、どの業種にも言えるかもしれませんが、働いている側の立場からすると、大手系は【縦割りがしっかり】しているのに対して、中小系は【部門を超越】した行動も求められます。
そのため、小規模事業者の建売業者の従事者へは、個性や実力の高さを要求されます。
逆に言えば、そういった高いハードルの要求をクリアできれば、大手企業の社員よりも高額な報酬を得ている従事者も多いと言うことです。
会社の縛りが少ないという点は【働きやすさ】につながるので、あえて小規模の建売業者を渡り歩いている営業マンも実際に存在します。
当の私はというと、勤務した会社では設計のみをやってたわけでもなく、設計以外の【用地仕入】【販売業務】の分野へ自ら首を突っ込んで、何でもやろうとしてました(笑)
ですので、一般的な設計士より広い守備範囲であるという自負があります。
建売業者の生業の中では、建売住宅の最初(用地仕入)から最後(建物決済)までの実務経験を積んでいるため、今回のテーマを経験も踏まえたうえで語ることができるのです。
建売住宅が世に出るまで
建売住宅といえば【完成現地販売会】のように竣工してから世に御目見えすることがほとんどだと思いますが、その前はどのような順序を踏んで出来上がるのでしょうか?
どんなに偉大な建築家でも、土地がなければ建築をすることはできません。
建売住宅も建物を建てるための材料として【建売用地】を仕入れる必要があります。
建売業者に在籍する【用地仕入営業】という部隊が土地を探してくるわけです。
仕入営業は地主さんに直接交渉するようなことはなく、地主と接触をもっている不動産仲介会社から情報を得ています。
不動産のプロ同士の付き合いなので反復継続の取引が多く、新規の仕入ルート業者開拓はとんとん拍子にはいかず、ある程度の経験や実績が要求されるポジションです。(仲介会社との蜜月関係が大事ともいえます)
それでも一つの建売用地候補に対して、いくつもの業者がかぶって買いの検討することが通常。
ライバル関係にある他社を出し抜くぐらいでないと、建売用地はなかなか仕入れられません。
どのようにして出し抜くかというと、
- 仲介業者の担当との【関係性強化】を図る
- 他社よりも高い値段で買い取る【金額勝負】
とういうことが挙げられます。
【関係性強化】は基本的には個人スキルによるところが多く、【中小系】の仕入に多いです。
【金額勝負】は施工部隊を自社で抱えているような【大手系】は、資金力の強みを活かして土地の買値を上げて勝負します。
また、このような交渉事と並行して、土地に瑕疵がないかを調査することも重要です。
現地で目視で確認できる瑕疵もあれば、ライフライン・権利関係を洗いざらい調べることで出てくる瑕疵もあります。
もし土地に瑕疵がある場合は、購入前購入後にクリアできる問題なのかを含め、検討が必要です。
どうにもならない瑕疵であれば、仕入れ自体を断念すべきでしょう。
さらに、『どのような商品になるのか?』ということを仕入前に検討することも必要です。
商品は【価格】【容量】【品質】などの要素で構成されますが、不動産においては【価格】にかなり比重がかかってくるかと思います。
言い換えれば、『価格さえ間違えなければ不動産は必ず売れる!』といっても過言ではありません。
そのために、
- どれぐらいの大きさの住宅になるのか
- 建物仕様はどの程度のレベルにするか
ということも、価格決定の要素として、事前に検討しておく必要があります。
住宅の大きさに関しては【設計士が間取りを考える】ことで検討をし、建物仕様などは【販売営業がニーズや販売価格帯に合致する仕様選択】などを検討し、かかる建築費や諸経費なども含めた予算を、仕入れ検討の事業計画に盛り込んでいきます。
こうして、建売業者の各セクションごとに、交渉→調査→検討などの手続きを踏んで、土地は仕入れられるのです。